認定NPO法人ブリッジフォースマイル
この記事について
いつもarigatobankアプリで様々な企画へ支援をくださり、ありがとうございます。皆さまの支援が、各団体の活動の大きな支えとなっています。支援活動の様子をお伝えするため、支援先のひとつである認定NPO法人ブリッジフォースマイルで里親支援を担当される池羽様へインタビューを行いました。日本の里親制度について知り、どのような支援ができるか考えてみませんか。
里親制度とは?
―― 日本の里親について、制度や規模など概要を教えてください。また、社会的養護において、里親制度はどのような役割を担っているのでしょうか?
「保護者のない児童、被虐待児など、それぞれの事情で親と離れて暮らす子どもを自分の家庭に迎え入れ育てるのが里親制度です。日本には養育里親と、特に経験や知識が必要なケースを引き受ける専門里親、親族が里親となる親族里親、養子縁組前提の養子縁組里親があります。養育里親は4人まで養育できるのですが、それを超えて5人以上養育する場合はファミリーホームとなります。里親全体での登録は14,401世帯で、委託世帯は4,759世帯、委託児童数は6,019人になります※。児童養護施設も小規模化による家庭的な機能強化を図っていますが、1対1の関係を築きやすい、家庭という環境で養育する里親さんには社会的な期待が高まっています。」
―― 里親制度の良い点・難しい点は何がありますか?
「良い点は、やはり子どもを家庭的な環境で養育できるというところで、施設だと一人の子どもを大人が見続けられる状況ではないのですが、里親家庭では1対1の関わりができ、愛着形成するうえで良い環境だと言われています。難しい点としては、1対1がゆえに相性が合わない場合は里親と子どもの関係が煮詰まってしまうことがあるケースも見られます。また、施設では18歳での自立に向けた準備を職員や先輩から学べるため、自然と心の準備をできる子どもが多いのですが、里親家庭では自立への意識が芽生えにくく、葛藤が生まれやすいのではという印象を受けております。他にも里親経験の差によって、奨学金などの情報に格差があると感じることがあります。」
―― 家庭に近い環境で子どもを養育できる一方、子どもの自立支援については課題もあるということですね。こうした課題に対し、制度は変わってきているのでしょうか?
「現在、国ではフォスタリング機関をつくろうという動きがあり、各地で設置が進んでいます。この機関では、里親家庭向けの研修やリクルーティング・マッチング・子どもの自立支援事業などを行っています。例えば東京都のフォスタリング機関では、18歳で里親家庭から自立したあと10年間の支援期間があり、専門職員が支援を行っています。」
里親について知り、支援につなげる
―― 里親家庭での養育は子どもたちの成長にどのような影響を与えていると思いますか?
「子どもにとって、特定の大人が自分だけを見てくれているという状況が発達に大切だと言われています。乳幼児であれば、常に大人が側にいて自分を見てくれる環境があることで、安心感を感じ愛着形成につながると言い、この1対1の関係を育むため、施設も小規模化が進んでいます。また、1対1での関係構築というのは、乳幼児に限らず中高生になっても愛着形成のために必要と言われています。このため、近年では里親家庭での養育が推進されるようになってきています。」
―― 里親制度への理解が広まることで、どのような効果が期待できますか?
「漠然と知っていても、実際は里親制度をよくわからないという人は身近でも多いです。社会的養護という課題について理解が広まることで、地域社会全体で子どもに目を向けることができればと期待しています。また、子どもの意向もあるので一概には言えませんが、里親家庭であることをあまりオープンにしていない家庭が多いため、社会の理解が広まり里親家庭であるということを隠さず語れるようになると良いと思います。最終的には、里親の意義が世間に理解され、里親自身がエンパワメントされると同時に、里親登録を希望する人が増えるとさらに良いと思います。」
―― 里親制度を支援する具体的な方法はありますか?
「我々のような団体をご支援いただくことで、間接的な里親支援になります。また、学習支援やセミナー運営などのボランティア活動への参加もひとつの手段としてございます。」
ブリッジフォースマイルの里親支援について
―― 里親支援として、どのような活動をしていますか?
「里親さん向けには、自立支援に関するセミナー開催や、奨学金等、各種支援情報の提供などを行っています。子ども向けにも、セミナーや職場体験、奨学金プログラムの提供、個別相談、居場所事業などを行っています。自立後のアフターケアも含め、里親さんと連携しながら相談にのります。また、フォスタリング機関の職員向けに自立支援のセミナーや情報提供を行うことで、間接的に里親家庭のサポートも行っています。」
―― 里親支援における目標は何でしょうか?
「我々の大きな目標は、親を頼れなかった子どもが生育環境に関わらず平等な機会や情報を得て、自己実現できるような社会をつくることです。選択肢がないまま大人になることで進路選択の幅が狭まることもあるなかで、ブリッジフォースマイルが提供するプログラムを通してその子の人生の選択肢を増やしていきたいと思います。また、自立するということは、誰にも頼らず生きていくことではなく、頼れる先を増やすことだと考えています。セミナーや居場所事業を通して、里親家庭の児童が私たちスタッフやボランティア、または子ども同士の横の繋がりをつくってもらうことも目標のひとつです。」
―― ブリッジフォースマイルとしての課題・今後の展望や目標について教えていただけますか?
「来年から児童福祉法が改正され、公的な制度の下、里親家庭で暮らせる年齢の上限が撤廃されます。今までは原則、18歳で自立することを前提に、支援プログラムを組んできたものの、年齢での線引きがなくなることで、私たちの支援のあり方も変わってくると思います。年齢を区切りにした一律的な支援ではなく、1対1での個別的な対応がますます必要になるだろうと感じているため、こうしたニーズに答えられる人材を集めながら、より専門性を高めていきたいと思っています。」
―― さいごに、arigatobankの支援者へメッセージをお願いします。
「国では家庭的養育の推進が謳われていますが、実際の支援の現場における感覚としても、集団的対応よりも、1対1の、より個別的な対応のニーズが年々増えている印象です。こうしたことからも、今後、より個別的な養育が可能な里親へのニーズは一層高まっていくと思います。『子どもは社会で育てる』との認識の下、皆様にはまずは、親を頼れない子どもの存在に目を向けていただきつつ、その中で、一人でも里親登録を考える人が出てきたら喜ばしいことだと思います。もちろん、里親になる以外にも、色々な形でのサポートが可能だと思います。この記事を読んで、皆様が少しでも自分ができるサポートについて考えていただけたら幸いです。里親さん自身も一人で抱え込むのではなく社会に頼りながら全体で子育てしていってほしいと思っています。」
インタビューご協力
池羽 様
支援団体
認定NPO法人ブリッジフォースマイル
虐待などで親を頼れず児童養護施設や里親家庭などで暮らしている、また暮らした経験のある子どもたちが、笑顔で暮らせる社会を目指して、2004年から活動しています。社会に巣立つ時に直面する壁を乗り越え、未来に向かう勇気を持てるように、一人暮らしの準備やキャリア形成のためのセミナー、居場所や住まいの提供、伴走支援、就労・転職サポートなど、子どもたちの自立のためにさまざまな支援を行っています。
団体ホームページ
- ※ 「社会的養育の推進に向けて」P2、令和4年3月31日厚生労働省子ども家庭局家庭福祉(https://www.mhlw.go.jp/content/000833294.pdf)