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親を頼れなかった子どもの声 〜 当事者が必要だった支援とは? 〜

認定NPO法人ブリッジフォースマイル

この記事について

いつもarigatobankアプリで様々な企画へ支援をくださり、ありがとうございます。今回は、支援先の1つである認定NPO法人ブリッジフォースマイル主催の「親ありき日本をこえるスピーチイベント コエール2023」を取材しました。イベントでは、親を頼れずに社会からも守られなかった過去を持つ当事者が登壇し、自らの経験を共有しました。何が語られたのか?スピーチの一部を抜粋して、お届けいたします。

「いきなりですが、皆さんは”居所不明児童”って知っていますか?」

―― ”居所不明児童”とは、住民票の登録はあるが、行政/福祉サービス・義務教育などの記録がなく、自治体が安否を把握できない子どものこと。1人目の登壇者は、現在はトレーナーとして活躍するスポーツマンのCさん。”居所不明児童”だったというCさんは、小学校2年から学校に通えない時期を経て、小学校5年のときに児童養護施設へ入所します。なぜそうなったのか・何が問題なのか?が語られました。

「僕の両親はよく喧嘩をしていて、父は気性が荒く僕や母に暴力を振るったり、母も僕に対して暴力的でした。ある日、離婚することとなり、僕は父と暮らすこととなりました。父の仕事は中々続かず、お金も無くなり、家を追い出され、車上生活になりました。学校も行けない、車上生活で転々と場所を変えていたため、まわりに相談する選択肢もなく、そもそも父は絶対的な存在。逆らうことができない、まわりに助けてなんて言えない。ただただ飢え死にしないように考えているだけでした。」

―― そんな車上生活も3年目のある日、お父様が突然倒れ、保護されたCさん。

「倒れた一年後に、父は亡くなりました。たった一人の家族。大好きな父ちゃんでした。でも、あの日があったからこそ、社会は僕を見つけてくれました。たった3年間と思われるかもしれませんが、10歳の僕にとっては辛くて孤独な3年間でした。僕の場合は、父が倒れたことによって発見されましたが、他のケースでは事件化したり、勇気を振り絞って逃げ出したり、偶然に発見されることも多いです。」

―― 6割が虐待を受けていたデータ*もあるなど、居所不明児童には保護後も多くの影響が残るため早期発見・介入が重要です。国の対策も強化されつつある一方で、Cさんが思う問題点とは。

「そもそも、法的に整備・強化されても居所不明児童の存在を知らないひとが多くいる限りこの問題は解決されません。法の限界があるからこそ、早めにまわりの大人が介入することこそが、1番の解決策ではないでしょうか。居所不明児童とは単に親の問題だけではありません。全てのまわりの大人がSOSを出せない子どもの存在を見てみぬふりをしてきた結果だと思います。まず居所不明児童の存在を知ってください。そして次にまわりの子どもたちに目を向けてください。少しでも気になったら声をかけてあげてください、そして不自然だと思ったらすぐに通報してください。ぜひこの問題をみんなで解決していきましょう。」

「差し伸べる手を持った社会へ」

―― 2人目の登壇者は、看護師として働きながらミスコンに挑戦するなど自ら人前に出て虐待のない社会をめざして活動するSさん。彼女は、母のパートナーから「しつけ」という名の暴力を受け、小学校4年から中学校1年まで児童養護施設で暮らしました。

「私は母子家庭で育ちました。小さいころ、私は母と兄と当時母がお付き合いしていた彼と4人で暮らしていました。けど経済的に苦しい状況でした。母は朝から晩までアルバイトを掛け持ちしながら必死に働いていました。だからよく、彼が私達の面倒をみてくれていましたがしつけという暴力を受けていました。いつも殴られていたのは母がいないときです。」

―― 母に心配をかけないよう、暴力のことは誰にも言わなかったという。ストレスから学校で問題行動を起こしたり、兄と家出を繰り返したりした。そして警察に何度も保護され、児童相談所にてSさんの児童養護施設への入所判断が行われた。

「当時担当してくれた相談員さんにどうしたいのか?と聞かれたので『母と兄と3人で暮らしたい。母が彼と別れてくれるなら家へ帰る』この思いをはっきりと伝えました。母からの返事は『別れられない』でした。そのため、10歳で児童養護施設へ入ることを決めました。きっと母は私を選んでくれる、そう思っていたので正直裏切られた気分でした。施設に入り、いつここから出られるか分からない。これからどうなるのかすら分からないそんな真っ暗な暗闇を3年ちょっと過ごしました。」

―― なぜ虐待をうけることになったのか、どこに問題があったのか。

「子どものことを見きれなかった母が悪かったのでしょうか?私は違うと思います。シングルマザーに対する支援が充分でない社会に問題があると思います。母は稼ぐために子どもを見てくれる場所が必要でした。そのため当時お付き合いしていた彼の存在はきっと当時の母にとっては大きかったのだと思います。『子育ては自己責任。育てられへんのやったら、産まんかったらいい。』その一言で、助けを求めている人のSOSを奪っているのに、気がついていますか。」

―― 全国に約135万人いる”ひとり親”、中でも母子家庭世帯の平均年収(約240万円)は父子家庭の半分にも満たず、養育費の受け取り率も約28%と低い数値に留まる*。経済的に苦しい家庭への公的支援は急務だが、他に何があれば状況を変えられるのか?

「多くのシングルマザーが働いています。なかにはシングルマザーを隠して働くママもいます。そんなママにとって、人と関わり関係をつくれる場所が職場だからです。一人で抱え込んでいるママに対して、気付ける場所でもあります。相談しやすい環境、話しかけやすい環境からつくっていきませんか。ママにとって気にかけてくれる人が近くにいるだけで救われます。そんなあなたの優しい心が巡り巡って、家で待っている子どもに届きます。私の経験のように、暴力を受ける子どもが減るきっかけになることもあります。」

イベント主催 / 支援先団体

NPO法人ブリッジフォースマイル
虐待などで親を頼れず児童養護施設や里親家庭などで暮らしている、また生活経験のある子どもたちが、笑顔で暮らせる社会を目指して、2004年から活動しています。18歳でひとり社会に巣立つ時に直面する壁を乗り越え、未来に向かう勇気を持てるように、一人暮らしの準備やキャリア形成のためのセミナー、居場所や住まいの提供、伴走支援、就労・転職サポートなど、子どもたちの自立のためにさまざまな支援を行っています。

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