一般財団法人ARIGATO
この記事について
いつもarigatobankアプリで様々な企画へ支援をくださり、ありがとうございます。昨年の「児童養護施設の学生向け学習費支援」においても、みなさまの支援は学習に必要な資金を確保するための大きな手助けとなりました。この記事では、実際に支援をした支援児童の在籍施設である「社会福祉法人 下関大平学園」の養護課主査・川久保さんへのインタビューを通し、児童養護施設の現状と、支援金が子どもたちの生活にどのように影響を与えたかをお伝えします。
児童養護施設とはどういった施設か?
―― 現在、日本には全国で612か所の児童養護施設があり24,539人*の子どもが暮らしているということですが、どのような子どもが多いのでしょうか?
一番最初の立ち上げは戦災孤児のためだったので、親御さんがいらっしゃらない子どもが多かったです。今は親御さんがひとり親だったりとか、虐待児だったりという子どもが増えています。全て親御さんが悪いわけではなく、親御さんの健康問題とか、どうしても仕事が見つからなかったりとか、障がいがあるお子さんとの向き合い方に悩みを抱えていたりなど。一生懸命養育はされているけど、どっちもが限界にきてお預かりすることが増えています。
―― さまざまな理由から親と一緒に暮らせないお子さんがいらっしゃるということですね。施設の規模や暮らしはどうでしょうか?
小規模のグループホーム化が進んでいます。子ども6人と職員5名くらいの交代制の施設へ移行が進んでいますね。うちは約40名の施設で小規模グループホームを2か所もっているので、規模としては中規模になります。養護施設が家庭になるので、施設から地域の学校に通って、普通に授業を受けて帰ってくるという家の役割ですね。集団生活なので、お風呂やご飯の時間はある程度決まっています。大半は自由時間で、友達と遊んだりとか、地域のスポーツ少年団に通っていたりとか、門限はありますけど。普通のおうちの感覚で子どもたちは過ごしていると思います。
―― 子どもたちの家の役割を担い、生活面をサポートされているんですね。学業を支えるための取り組みはどういったものがありますか?
中学生までは希望すれば全員を通塾させています。あとは週1~2回大学生のアルバイトの方が来てくれて、勉強を教えてくれるという時間をつくっています。コロナ禍で中断していたのですが、徐々に再開していこうかなという流れになっています。
今回の学習費支援について
―― 今回の支援は、高校生向けに1人25万円を上限として使途を学習費に限定して行いました。どんな子どもが利用してくれたのでしょうか?
高校2年生の子どもが参加しました。通塾とかだと、中学生までは公費で塾のお金が全額でるのですが、高校生になると月2万円までっていう決まりがあるんですね*。なので、月2万円までといってそれを超えたら自分で出すか2万円以内に収めるかというところになるので、今回みたいに年度内で自由に使えるとわかったらお金の心配がなくなるので気合を入れて勉強ができると。
―― 高校生の支援が手薄になっているということですね。利用したお子さんが抱えていた課題は解決につながりましたか?
塾代に使えたり、検定の費用とかが出せたり。あとIT機器ですね。問題集とかがもう紙ではなくて、今までうちの子たちは紙でいただいていたんですけど、(パソコンを購入して)それをUSBに落としてもらえるようになったとか。英語の場合、ヒアリングの教材をUSBに落としてもらって自分で聞けるようになったということがありました。
―― 学習費支援はどういった効果があると感じましたか?
今回は進学希望者のみ支援金を利用させていただいたので進路をある程度決めていたのですが、就職か進学か悩んでいる子たちにとっては進学が視野に入れられることが多くなるという機会になると思います。入学金だけでも払えたりとか、授業料だけでも払えたりとかすると、大分選択肢は広がってくると思います。
―― 学習費支援には一定の効果が望めるということですね。ほかに、児童養護施設に必要な支援物資やサービスはありますか?または、過去の支援で役立ったものはなんでしょうか?
食料関係はとても助かっています。今回のように給付型の支援金も助かります。奨学金は子どもたちで返さないといけないので、給付型のほうがありがたいというのが実感としてあります。支援金の用途指定がない場合は、子どもたちの意見を聞いて、費用や安全面を考えながら共用娯楽費(ゲーム・遊具など)にも使います。
さいごに
―― 支援者の方々へメッセージをいただけますでしょうか。
児童養護施設の子どもたちの大学進学は一般家庭に比べるとまだ低い割合ですが*、支援金をいただけると、ちょっとずつ自分の未来を考えられるように・現実的なこととして捉えられることが多くなってくると思っています。漠然じゃなくて、こういう支援があるからここまで行けるよ・こんなことができるようになるよ、と具体的な提示もこちらができるようになります。子どもたちも、より具体的な夢を持つことができるのでとてもありがたいです。
- ※ 厚生労働省(社会的養護の施設等について)
- ※ 地方自治体の児童保護費から支出、高校3年は2万5千円
- ※ 厚生労働省(社会的養護の現状について)
インタビュー協力
社会福祉法人 下関大平学園
養護課主査 川久保様